スペシャル

原尾宏次プロデューサー インタビュー

「面白ければなんでもあり!」──『Rio RainbowGate!』の魅力はスタッフもキャストも大暴走して生まれた過激なギャグだった!? カジノを舞台に弾ける大バトルの魅力をキミも目撃せよ!

「萌えパチ・萌えスロ」というジャンルを切り開いた偉大な金字塔「Rio」シリーズ。
アニメ化にあたってその歩みを一望するロングインタビューをお届けします!
キャラクターたちの魅力はどのようにして培われたのか?
そこから生まれたアニメ版の魅力は? 
これであなたも「Rio」の魅力を丸裸にできちゃうぞ!?

PROFILE
原尾宏次
「Rio RainbowGate!」プロデューサー。コーエーテクモウェーブ取締役。

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「Rio」シリーズはこうして「萌えパチ・萌えスロ」の世界を切り開いた!

――このインタビューが掲載されるのは1話が放送された直後なのですが、先に拝見して、終盤の豪快で愉快なバトルシーンには驚かされました。かなり力のある、笑える映像になっていたように思います。

原尾 そうですね。もともと「萌えスロ」から始まった「Rio」シリーズのアニメと聞いて、お客様は「美少女がとにかくたくさん出てくる」たぐいの作品か、某ざわ的な賭博アニメみたいなシリアスなバトル作品か、そうした両極端な企画を想像されている人が意外と多いかと思うんです。でも、実際は全然そんなことはなくて、どの話数から見ても楽しめるような、愉快な作品になっていると思います。先行してアニメイトさんのイベントで第一話を上映しましたが、そのときもほとんどの方の感想はポジティブなものでした。加戸監督とシリーズ構成の関島先生には、リオのキャラクターを理解しつつ、作品の自由度の高さを活かしたオリジナルの話を書いていただけたと思っています。音響面でも、音響監督さんから「ちょっとやりすぎたでしょうか?」と聞かれたときには「面白ければなんでもありです」とお答えしていますし、各工程の各パートでみんなが本当にいいものを目指して、本当にいいものになっているという感じが強いですね。自信をもってみなさんにお届けできます。

――今日は『Rio RaibowGate!』でヒロインのリオとその世界観を初めて知ったみなさんのために、「Rio」という企画シリーズのこれまでの歩みを振り返っていただきつつ、『Rio Raibow Gate!』の魅力について語っていただきたいと思います。よろしくお願い致します。では、まずはそもそもの企画の成り立ちからご紹介いただけますか?

原尾 リオというキャラクターは、2003年に「スーパーブラックジャック777(ネット社)」というパチスロシリーズのヒロインとしてデビューしました。それ以前、早いうちからテクモ(現:コーエーテクモウェーブ)はキャラクター路線のパチンコ・パチスロに力を入れようとしていたんですね。

――いわゆる「萌えパチ・萌えスロ」路線、美少女路線と呼ばれる方向性ですね。

原尾 そうです。われわれが参入したのは1998年頃で、それ以前から「萌え」に近い路線の女の子キャラクターが登場する機種もあったのですが、まだ「企画担当者の趣味」感が抜けず散発的にしか見受けられませんでした。ですから、注目度もそれほど大きくなっていかなかった。組織的に「萌え」という方向へ、他社との差別化を狙って動いたのは、テクモがおそらくは初めてだったろうと思います。最初からテクモは、Team NINJAという「デッドオアアライブ」(注:美少女キャラクターで人気の3D格闘対戦ゲームシリーズ)を作っているチームから人材を強奪したりして、「そっち方面」を意識したものを作ろうとしていましたから。そうした流れが大きなうねりになって、『Rio RaibowGate!』にまで繋がる人気が生まれたのだろうなと思います。

実機におさまりきらない、その広大な世界観の魅力……

――その『Rio Raibow Gate!』ですが、この作品に登場する世界設定は、今回アニメ化されるにあたって作られたものなのでしょうか?

原尾 いえ、それは実はもうかなり前から意識してやっていたんです。2003、2005、2007、2009年とリオの登場する機種が出ているのですけれど、その中を繋ぐような設定を実機の外側で積み重ねてきました。「SBJ」が出た翌年の2004年に「ネットブラック」と「テクモレッド」という二種類のリオが登場するカレンダーを販売したのですが、ここですでにハワードのホテルが描かれ、リオの母親であるリサが登場しています。でも、リサが実機の演出に登場するのは2007年の「リオパラダイス」からなんですね。リサの友人で妹分だった、まだ10代のローザ(なんとツインテール!)も登場していますよ。

――ということは、当初から「萌えスロ」としてだけではない展開を考えて設定を詰めておられた。

原尾 そうですね。テクモ側では、リオは萌えスロに出てはいるけれども、独立したキャラクターコンテンツだと考えて展開していました。それは他のキャラクターも同じで、女優のローザは西部劇のTVドラマのピンキー・ダイアンという女盗賊役を代演してブレイクしたという設定なのですが、それは「SBJ」と同じような萌えスロシリーズの「賞金首」というシリーズと世界観がリンクしている形になっているんです。アーニャというドラマCDやイベント先行で誕生した新キャラクターも、「十字架」のエミリの子孫という風にシリーズと繋がっていますし、そうしたシェアードワールド的なリンクも考えて設定は作ってきました。そのあたりは、ソフトバンク・パブリッシングさんの『ゲーマガ』という雑誌で「リオ・デ・チャンネル」というコーナーを5年連載していて、そちらでも紹介してきています。ゲーム専門誌でこうした連載が始まって、しかもそれが長く続く人気コンテンツになっているというのはかなり異例のことみたいですね(笑)。

リオは「記号的ではない」美少女キャラクターを求めて生まれた

原尾 リオの設定がこれだけ大量にあるのは、当時他に似たような作品例がなかったから、という理由もあります。リオの世界には登場人物が30人近くいるのですが、萌えスロと呼ばれるものの人気シリーズであっても、こんなに登場人物がいる作品はあまりないんです。予定調和的な萌えパチ・萌えスロが広がっていって、アニメっぽい演出をする機種も増えるようになりましたけれど、そこに骨格を持ったストーリーを背景にちゃんと持たせることができているタイトルは少ないんですね。簡単なあらすじが表示されるだけ、みたいなものがまだまだ多いように思います。

――キャラをポンと放り込むだけで、キャラを取り巻く関係が描ききれてていないと。

原尾 そうです。テクモが手がけるものには、年を経ても錆びつかないような確固たる世界観がキャラクターの背景に欲しかったんです。加戸監督と最初にお会いしたときにもお話ししたのですが、リオというヒロインは、カジノで働いていて、給料を貰って、ご飯を食べて寝ているキャラなんです。なんとなく学校にいる、永遠の高校生……みたいなキャラではないことが「Rio」シリーズでは重要なんだと考えています。

――地に足の着いたキャラであり、記号的なキャラではないと。

原尾 そのとおりです。そして、そういうキャラクターであることを求めるファン層がいたからこそ、人気も出たんだと私は考えています。だから、足のサイズから血液型から、実は日本人のクオーターでおじいさんは柔道家で……というような設定まで作って、それを大事にしていったという形ですね。

――ちなみにリオの世界観はすべておひとりで考えてらっしゃるんですか?

原尾 はい、実機関連はスタッフと相談してますが、雑誌連載記事などは、すべて私ひとりで考えています。

――それはすごい。膨大な設定ですから、てっきりチーム制で作られているものかと。

原尾 まあ、好きなだけです(笑)。取締役になっての権限をこんなところにしか使っていないって……バカですよね。

――もともと設定の多い作品がお好きだったのでしょうか?

原尾 いえ。でもどんな名作にもキャラクターって絶対必要だと思うんですよ。もちろんパズルゲームとかは違いますけれど。いいお話には必ず良いキャラクターがいて、そのキャラクターには幸せになってもらいたいとか、死んだら悲しいと思う。そういうことが作品づくりの基本ではないかと思うんです。そう考えると、きちんと設定はつくらなければいけないと思いますね。そうすることで、キャラクターのブレも小さくなりますし。決めてなんの意味があるの? とおっしゃる方もいますが、先日「怪盗ロワイヤル」を作った大塚剛司さんの講演を伺ったときに、彼もあのキャラクターデザインを作るために三桁に届くくらいのイラストレーターさんに会って、絵が決まってからも細かい設定を全部決めていったということをおっしゃっているのを聞きました。やはり、そこは必要なことなのだと思いますね。

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