スペシャル

懐かしのゲーム紹介

第2回「スターフォース」

どうも原尾Pです。
今回、紹介するのは、シューティングゲームの金字塔「スターフォース」です!
たぶん、色々と文句をつけたい方がいらっしゃると思います。アニメ本編ではラリオス合体前破壊ボーナスを逃してましたものね。実は、あれは加戸監督のプレイを収録したものなんです。そんなわけで(笑)まぁ、ご容赦下さい。

「スターフォース」は、1983年に業務用ビデオゲーム(いわゆるアーケードゲーム)としてリリースされました。
マイシップである「ファイナルスター」の主兵装“スタービーム”は、地上物と空中物を対象の高低を無視して同時に攻撃することができます。ボタンひとつで全てを破壊する爽快感は「スターフォース」の真骨頂と言えるでしょう。ただ「同時に攻撃できる」とは「同時に攻撃してしまう」ということも意味しています。地上物を攻撃している間は、その先へとスタービームは貫通しないのです。地上物が、空中の敵の盾、遮蔽物になってしまうのですね。特別ボーナスを取るには地上物を破壊する必要がある。しかし、その間に空中の敵が忍び寄る。まさに、「ご飯とおかずを、どうバランスよく食べるか」的なせめぎあいが要求される“連射力と判断力”同時重視を両立させた傑作ゲームと言えるかと思います。
当時、「テーカンにしか出せない金色」と賞されたグラフィックスは、今見ても十分に美しいものです。また、ビデオゲーム黎明期を代表する“パワーアップ”として「パーサー」の存在は大きなものでした。連射機能に加えて前後移動速度50%増、そして何よりも、軽快な専用BGMによるパイロットの士気高揚効果300%!!

さて……初級編は終了です。わざわざこんなコラムを読んでいる奇特な方……そう、貴方のような方が、こんな通り一辺倒な記事で満足するわけがありませんよね? 今回は「スターフォース」の“前後”に注目したいと思います。

スターフォースの前 「SENJYO」

1983年11月に「SENJYO」というゲームが発売されました。
「SENJYO」はテーカン(テクモの家庭用ゲーム参入以前の社名)の自信作でした。画面の奥から迫りくる敵を砲撃するという3D視点……いや、飛び出しませんよw……の構成は臨場感にあふれ、まさにゲームの未来形を先取りしたようでした。展示会でも業界の評判となり多くの予約が集まりました。
そして……壮絶にコケてしまいました。ゲームセンターでの売り上げは芳しいものではなかったのですね。時代的に早すぎたのだと思います。当時は、平面的な画面構成のゲームばかり、そんな中での3D視点はプレイヤーには受け入れにくかったのではないかと思います。

ともあれ、テーカンには、日本中のゲームセンターからの恨み節が寄せられるようになりました。「SENJYO」は、ほっかむりをしてとぼけるには売れすぎてしまったのです(笑)。そこで社長から厳命が下ります。「SENJYO」と同じ基板を使って単純なスカッとするやつを作れ! 今すぐに!」と。

それから10ヶ月後、1984年9月、ゲーム史に名を残す傑作シューティング「スターフォース」が発売されました。そうです、「SENJYO」がコケなければ「スターフォース」は生まれなかったかもしれないのです。(ちなみに開発期間はほぼ半年、1984年3月に発売された「ボンジャック」と並行して開発されました)

こんなわけで業務用「スターフォース」が発売されたのですが、出荷されたものの多くは「SENJYO」向けの“改造用交換ロム”としてでした。家庭用で言うなら、アペンドディスクや追加ダウンロードみたいなものでゲーム内容を変えてしまうと言えばご理解いただけるでしょうか? 当時の販売責任者だった現監査役が「だから業務用のスターフォースはあんまり儲からなかったんだよね」というボヤキの証言を残しています。

「スターフォース」がテクモに莫大な収益をもたらしてくれるのは数年後、8ビットゲーム機時代に突入してからのOEMロイヤリティー収入と続編の販売によってです。もちろん“金”銭面だけでなくシューティングの“金”字塔としての評判は、テクモに無形の恩恵を与えることになります。

さて、“金”“金”と強調してますが、次は「スターフォース」の特長のひとつであった“金色のグラフィックス”にまつわる話です。

「SENJYO」

幻のゲーム「Au」

いや……携帯電話じゃないですよ。「Au」というタイトルは、金の元素記号(銀はAg)から名付けられました。その名の通り、スターフォース基板が得意とした“金色表現”を突き詰めようというコンセプトでスタートしたタイトルです。

しかしながら残念なことに「Au」は発売に至ることはありませんでした。
展示会では評判になったものの、数回のロケテスト(開発中に試験的にゲームセンターで稼働させること)を経て、いわゆる没ゲーとしてお蔵入りしてしまいました。
なんで没になったの? と聞かれれば、単純に“売上”だと思います。家庭用ゲームと違って、業務用はゲームセンターの売り上げで商品価値が決まります。超美麗なグラフィックや荘厳なサウンド、斬新なゲームシステム……があろうと、100円玉(or50円玉)をお客様が入れてくれないものは商品化には至らないのです。

そんなわけで、この「Au」は知る人ぞ知る幻のゲームとして、一部の好事家の記憶にだけ留まる事になりました。かくいう私もゲームファンのはしくれとして「Au」がどんなゲームだったのか気になって仕方がありませんでした。名だたるゲームマニアが「Au」の“金色”は素晴らしかったと語っているのですから。長い時間を経て、私の頭の中では、“金色に輝くスターフォースの後継機”という妄想が大きく膨らんでいきました。ゴールドメタリックのファイナルスター! それはさぞかしカッコイイに違いありません。

そして、そう、つい最近のことですが、なんと幻の「Au」が発見されたのです!!
ですが、倉庫の片隅で長年ひっそりと眠っていた開発ボードは既に起動できる状態ではありませんでした。そして旧テクモ社員でも古いハードウェアを修理できる人間は、そう多くはありません。無理に下手な修理をすれば、まだ生きているかもしれないデータを壊してしまうかもしれません。
でも長年、夢に見てきたゲームです。あきらめたくありません。いつもはリオの肌色成分増強に使っている取締役としての権限を総動員して(笑)「Au」復活を目指しました。
先輩社員と相談し、業界でも腕利きの技術者を紹介してもらい修理していただきました。

そしてついに「Au」復活です。長年、働いてて良かった!! トロイ遺跡を発掘したシュリーマンも、きっとこんな気持だったに違いありません。
でも……全然、スターフォースと違う! いやっ! なにコレ?!

油断してました。当時のテーカンは「SENJYO」の例からも分かるように“挑戦しまくり”な会社だったのでした。それを考えれば、むしろ「スターフォース」の正統進化版なんかを作るわけがないのです。ファミコンの「スーパースターフォース」でもシューティングのくせにRPGパートがあるくらいですから。
長い眠りから目を覚ました「Au」は、固定画面の面クリアタイプゲームでした。“箱庭シューティング”と言えばしっくりくるかもしれません。「スターフォース」に近いグラフィックコンセプトの敵を全滅させると次の面へ。ゲームシステムは「ボンジャック」的ですね。ショットの仕様が少し変わっています。空中敵を1機破壊すると、地上に配置された敵ベースを破壊できる対地兵器を1発撃てるようになる。対地兵器を打つと空中兵装に戻る……とショットがオートループするのです。地上の敵ベースの配置によっては、いきなり大量の弾が浴びせられて瞬殺されることもあります。ナムコさんの「グロブダー」に似ている感じでしょうか? 「スターフォース」のゴージャス版ではありませんでしたが、とても素敵なゲームでした。

今回は「どこがスターフォースじゃ!!」という皆さんの怒声が聞こえてくるようです。でも、ほら、「スターフォース」は、別にいいじゃないですか。皆さんにおまかせしますよ。「アニメはけしからん! オレならラリオスの合体前破壊ボーナスは楽勝だぜ!」って久々に「スターフォース」をプレイして失敗したりするのも楽しいでしょ。

「Au」

©TECMO KOEI GAMES CO.,LTD.

PROFILE
原尾宏次
「Rio RainbowGate!」プロデューサー。コーエーテクモウェーブ取締役。

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